仙水峠からいきなりの急登。
歩くたびに傾斜が増していきます。
樹林帯を抜けてからは直射が体力を奪っていきます。
まだこの時は「思ったよりキツイな!」ぐらいの感じだったのですが。
ピークが望めるくらいの場所まで登ってきたところで時計を見ると昼を過ぎています。
お腹も空いてきたのでお昼にしましょう。
甲斐駒の絶好の展望地での昼食はラーメン。
ガズが若干晴れた時を見計らっての1枚。
この後、急激にピークは白い雲の中に隠れてしまいました。
さあ、お腹も膨れたことですし、あとひと踏ん張りです。
ところが、ここから急激に足取りが重くなってきました。
昼食前からいつものペースが保てなかったのが気になっていたのですが、たんにシャリバテだろうくらいにしか思っていませんでした。
ところが、食事を取ってからの足取りが尋常ではありません。
まったく次の一歩が出ないのです。
身体も風邪の症状のように熱っぽく感じます。
それと同時に頭痛が激しくなってきました。
「もしかして高山病!?」。
経験がないので判断が難しかったのですが、体調は悪い方向へ進んでいるようです。
Uターンも考えたのですが、今のルートを引き返す自信がありません。
それよりは頑張ってピークに登り、北沢峠のダイレクトルートでの下山の方が負担が少ないように感じ、このまま進むことにしました。
13:30分、通常の200%くらいのペースで栗沢山2714mに到着しました(平均タイム:仙水峠→栗沢山1:30)。
到着すると感慨にふける余裕もなく、ザックを投げ捨ててフラットな場所に倒れこみました。
少し寝たような気がします。
若干眠ったらやや体調が戻りました。
この時点でアサヨ峰までの縦走は断念しました。
往復で2時間の余裕は時間的にも体力的にも無理でした。
さあ、下山としましょう。
ピーク西の岩稜からの稜線下りとなります。
仙丈を正面にゆっくりと下っていくのですが、思ったほど体調は良くなっていません。
それどころか急激に気分が悪くなって来ました。
ここで汚い話で申し訳ないのですが嘔吐してしまいました。
山の神さま、ごめんなさい。
ここで再度のストップ。
頭のなかで「ビバーク?!」の文字も浮かんできました。
マイナーな山、しかも平日ということで、仙水峠から誰にも会っていません。
「マズい、マズい、マズい」の呪文とともに、「こんな稜線でビバークなんかできるわけない!」という言葉もどこからか聞こえてきます。
30分ほど岩陰で休んでいると、若干気分が持ち直して来ました。
貴重な水ですが、口の中をゆすぎ、気力を振り絞って岩稜帯を下ることにしました。
何とか岩稜帯を抜け、樹林帯の下りを数度転びながら渓流の音が聞こえてくる場所までたどり着きました。
16:51、朝スキップした登山口に到着。
長い山旅になってしまいました。
エスケープのための代替え案ぐらいにしか考えていなかった栗沢山があれほど手ごわかったとは。
前日の睡眠不足や体調不良が重なったとはいえ、完全なる判断ミスでした。
もし仙水峠での判断が甲斐駒だったら、今頃どうなっていたのだろうと考えると恐ろしくなってきます。
まずはテントに戻ることにしました・・・。